名阪国道から神野口ICを降り、県道263号→782号と細い道を走ると、ひっそりとたたずむ「毛原集落」にたどり着く。
 そこにある「長久寺」に、ミニ遍路がある。
 「八十八カ所 石仏めぐり」と書かれた大きな看板が立っているため、近くまで来ると場所はわかりやすい。
 
 もともとここには「毛原寺」というとても大きなお寺があったが、江戸後期には一度廃寺となった。
 しかし、その跡地に建てられたのが、今の「長久寺」である。
 明治7年、住職の智龍上人(ちりゅうしょうにん)が、病気で倒れていたときに弘法大師のお告げを受けた。
 それをきっかけに、裏山に多くの石仏を安置し、明治15年にこの八十八箇所霊場「大師山」を開いた。
 
 【49番まで】
 本堂を参り境内を奥に進むと「新四国八十八ヶ所霊場」の木製看板がある。
 
 お地蔵さん同士の間隔はせまく、ほとんどが10~20歩くらい進めば次を参ることができる。
 道は狭く、上り坂が蛇行するように続く。
 とにかく上り坂が続くので、順調に体力が奪われる。
 
 ミニ遍路では、だいたいお地蔵さんの形状や大きさは似ている。
 しかし、ここではいろんな種類のお地蔵さんがある。
 中には、首がとれてしまったものを、無理やり後からセメント状のもので作ったものもある。
 
 また独特なのが面長で他より大きめの「虚空蔵」で、境内に数か所祀られている。
 
 あと特徴的なのは、お地蔵さん1体ずつに比較的きれいな前かけがされている。
 これは、毎年秋に「地蔵祭り」というものがあり、有志が前かけを交換しているそうである。
 こういった行事がずっと続いているあたり、地区内で愛されている場所であることがうかがえ、胸が熱くなる。
 途中に、岩に文字や仏様が彫られている個所がいくつかあるというのも、見ごたえがある。
 中には、どうやってそんな場所に掘ったの?という高い場所だったり、道から離れていて注意しないと気づかない場所にもある。
 
 【奥の院】
 50番あたりで上り坂が終わる。
 順路どおりならそこから下り坂が続くのだが、「奥の院」と呼ばれる案内板があり、小路が脇にある。
 進んでいくとかなり勾配のきつい上り坂で、奥の院まで100mとはいえ、平地の1キロ以上の体力を奪われる。
 
 よくよくまわりを観察すると、遠方にある岩に文字が彫られている。
 改めて、この場所の神聖さを感じる。
 登り切った先には「納骨堂」というものがあり、その奥には大きな岩に掘られた2体の仏様が待っている。
 坂を上りきった満足感だけではなく、何とも不思議な、心を満たされる感覚をひしひしと抱く。
 
 【88番・結願】
 再び順路に戻り、坂を下る。
 さすがに下りはペースが速い。
 87番を参った後には、池がある。
 よく見ると、その池のまわりにはたくさんの石仏が。
 「西国三十三ヶ所観音霊場」を模した石仏らしい。
 四国八十八箇所に西国三十三箇所と、2大遍路を体感できるとは、何度もぜいたくである。
 
 やがて最後の88番を参り、結願。
 
 境内にはお遍路以外にも、数多くの石仏があり、お遍路後にも楽しめる。
 決して有名なお寺ではないが、お遍路に興味がなくとも足を運ぶ値打ちは、じゅうぶんにあると感じる。

| 訪問日 | 2016年3月2日 | 
|---|---|
| 所在地 | 奈良県山辺郡山添村大字毛原 | 
| 所要時間 | 90分(徒歩) | 
| 参考URL | 【石仏に会いに行く】 http://kazesasou.com/hotoke_ka/nara_yamazoe/yamazoe163_tyoukyuuji.html  | 
| 備考 | 
